パラメトリック・デザイン 04:フォントのランダム割り当て

かなり時間が空いてしまったが、前回の続きで、illustratorのスクリプトを書くことでデザインのスタディ方法を、ちょっと向上させることについて書く。。

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例えば、一般的に、デザイナーがロゴなどを作成するとき、使用するタイプフェイスをあれこれと試して、文字の形状が変化することで、言葉の印象がどのように変わっていくかを注意深く見定めて、最適なトーンを選んでいくという作業がよく行われる。自分の場合、作業に入る前に、大まかに頭のなかにイメージが出来上がっていて、だいたいこういう雰囲気のフォントを使おう、ということが思い描けている場合が多いのだが、それでも、ふと思い立って試してみた全然違う雰囲気のものが、意外とよく似合っているということもある。フォント選びにも、自分の癖のようなものが出てしまって、時折それが、硬直した思考を生んでしまうことがある。

そこで、自分は、作業に入る前に、文字列に自動でフォントをランダムで割り当てるスクリプトを使って、ざっと様々な雰囲気の文字を一覧してみて、意外と良さそうなものは無いか調べることにしている。こうやって文字列にひとつひとつ違うフォントを割り当てていくのは、手動でやると結構面倒くさく、パソコンの中には何百種類もフォントが入っているので、チマチマと割り当てているとすぐに時間が消えていってしまう。機械的な作業は、面倒なだけでなく、モチベーションも奪い去っていくので、極力減らしたい。だからそれをスクリプトでやる。そうすれば、何十種類ものバリエーションを、とりあえず俯瞰して見てみるのに10分もかからない。その中に、自分が思いつけていなかった可能性を感じるものを発見できたなら、それも検討案に入れていけばいいし、無ければ、ないで当初の予定のものを検討していけば良い。

本当にちょっとしたことではあるが、こうやって一応、簡単でも良いので、スタディの総数を上げていくことが、最終的なクオリティの向上に少し繋がると思っている。。

 

選択したテキストにフォントをランダムで割り当てるスクリプト

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var iCount = textFonts.length;
sel = activeDocument.selection;

for (i=0; i<sel.length; i++) {
var randomNumber = Math.round(Math.random()*iCount);
sFontName = textFonts[randomNumber].name;
textArtRange = sel[i].textRange;
textArtRange.characterAttributes.textFont = textFonts.getByName(sFontName);
}
———-

たったこれだけの、10行にも満たないスクリプトになる。
選択するとき、テキスト以外の要素もまとめて選択してしまうとエラーになるので、使用することがあれば注意してください。。

低温調理、漫画「めしにしましょう」

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以前に作った低温調理器は機があるごとに使用している。寝る前などに肉と器具を鍋にセットし、そのまま朝起きるまで数時間、低温をやり続けるというパターンで、ほぼ何もしていないのに勝手に肉が程よく煮えていくという利点を享受している。普段、時間もあまりないし、手間のかかる料理というのが出来ないのだが、寝てる間に勝手にその「手間ひま」がかかっていくという話であれば、やらない理由はない。

温度設定と調理時間のバランスは、もろもろ実験を続ける必要があり、ネットを見ていると、ハードコアな人たちは12時間を超えるような長時間の調理をやって柔らかさの探求に入っていったり、温度域を、殺菌できてるのかどうか怪しいレベルの50度後半などに設定して極限まで肉汁を流出させない世界に挑むなど、いろいろなデータが公開されている。

ちなみに、自分が肉の低温調理というものを知ったのは、2年ほど前から、漫画家の小林銅蟲氏のブログを読み始めたことによる。氏のブログは、漫画の話などほぼ存在せず、生々しい料理写真が前衛的な文章とともに大量に貼られているというもので、普段あまり目にしない、「肉塊」の写真が頻繁に登場している。それらの分厚いかたまりを低温調理にかけていく様が何度も紹介されていて、その過剰さに中毒性がある。

あまりに料理に異様な情熱があるので、それが漫画になってしまい、「めしにしましょう」という作品になってモーニングで連載されている。少し前に単行本が出たので、自分も買って読んだ。第一話からいきなり低温調理の話で始まる。(リンク先で第一話が公開されている)

上品な料理は出てこず、異常な厚みの肉を使った、断面のほうがでかいカツ丼など、勢いのある料理が多く登場して、空腹感を煽る内容になっている。過剰な品目ばかりで、「欲望に従ってレシピを組む」「えげつなく味をつける」「露骨な味付け」「脳汁」などといったワードが登場し、そのような特異な調理でしか得られないような満足感について書かれている。殆どオーバーフローしているような味付けのものがもたらす、不思議な充足感への憧れはわかる気がする…。自分はこの漫画はすごく楽しめた。

新macbook pro (Touch barつき)を使ってみて・追記

touch bar付きのmacbook pro、「macOS Sierra 10.12.2アップデート」を適用したことでディスプレイのちらつき問題は解消されたようだ。アップデートしていなくても、最近は発症していなかったが…。

代わりに、文字入力している際に、touch bar部分に変換候補(かなとか、カナとか、漢字の候補)が出なくなってブランク(空白)のままになってしまうという不具合が発生するようになった。

致命的な問題ではないとは言え、文章を打つときにそういう変換を一発で出せないのは若干使いにくい。これもすぐ解消されるといいが…

新macbook pro (Touch barつき)を使ってみて

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先月、新しいmacbook proを購入した。それまで使っていたマシンが古すぎたため、ずっと新しいモデルが発売されるのを待っていた。新しくなり、処理速度は十分に早くなったのだが、各所で言われているように、不満は結構ある。

このモデルは、Touch barと呼ばれるタッチパネル式の補助ボタン群がキーボード上部にあるのが特徴なのだが、使うシーンがほとんどない。それでいて、ファンクションキーやESCキーもそこに統合されたことにより、よく使うキーなのに物理キーでなくなってしまったことがやや使いにくく、わりとストレスを感じる。物理キーなら、いつも同じ場所に、同じ幅で存在するために、ノールックで打てるのだが、Touch barはボタン幅が可変なので、見て確認しないと打てない。

電源端子も、macbook伝統の、コードに足を引っ掛けても大丈夫な、マグネット式着脱システムmagsafeが廃止されてしまった。

また全てUSB-C端子化されたことで、今までの周辺機器を使うための変換アダプタがたくさん必要になった。

更に、(最近配信されたOSアップデートでやっと治ったらしいものの)ディスプレイのバグで、たまに画面が砂嵐のように荒れたり、チラつきが激しかったりした。

キーボードも、タイプ感がよくなったらしいが、パチパチ音が大きくなり、うるさくなってしまった。(そもそも殆ど一人で作業しているのに、うるさいも何もない気もするが、移動中などで使うときに気を使ってしまう。)

何となく、総合的に、前モデルの仕様でただ処理速度だけ上げてくれれば良かった気がする。

ここまで書いて、何か自分が過去をひたすら懐かしむ保守的な人のようにも思え、悲しさがこみ上げてきたので筆をおこうと思う。筐体のデザインや薄さは、相変わらずとても良いと思う。

関係ないが、筆をおくという表現が気になったので今調べたら、筆をおく、は「置く」でなく「擱く」という漢字をあてるのが正しいらしい。今まで知らなかった。。

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歩いてすぐのところに湖と公園があるのは意外と良い。こういう写真だけ載せていると、かなりの僻地に引っ込んだと思われるのだが、これはそういう部分だけ切り取っているだけで、実際には家のすぐ前には交通量のそこそこある道路が走っているし、周りも住宅地なので家がたくさんある。ただ単に南側に大きめの湖があるので、そこを切り取ればこのように見えるというだけだ。

散歩をしていると、鳥の種類が結構多いような気がする。この日も、黒いカモがガアガアといって練り歩いていた。黒い鳥では、もちろんカラスが一番多い。と思う。

パラメトリック・デザイン 03:illustratorスクリプティング

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ちなみに、前回書いたような色をランダムに割り当てるだけのようなillustratorスクリプトであれば、以下のような数行のjavascriptコードで記述することができる。


sel = activeDocument.selection; //最初に色を割り当てたいオブジェクトを選択しておく
for (i=0; i<sel.length; i++) //選択されたオブジェクトの数だけ、色をランダムに割り当てるという内容を繰り替えす
{
newCMYKColor = new CMYKColor(); //色の変数を用意
newCMYKColor.black = 0; //この場合、黒は常にゼロにする
newCMYKColor.cyan = Math.random()*100; //シアンの値を0-100の間でランダムに決定
newCMYKColor.magenta = Math.random()*100; //マゼンタの値を0-100の間でランダムに決定
newCMYKColor.yellow = Math.random()*100; //イエローの値を0-100の間でランダムに決定
// 色の割り当て
sel[i].filled = true; //塗りを設定
sel[i].fillColor = newCMYKColor; //塗りの値に上記で定めたカラーを設定
}

このコードを、例えば「ランダムに色を割り当てる.jsx」などのファイル名で保存し、アプリケーションフォルダ内の、
Adobe illustrator > Presets > ja_JP > スクリプト
のフォルダに保存するだけで、illustratorメニューの、
ファイル > スクリプト
から、先ほどのランダムに色を割り当てる、というコマンドを呼び出すことができる。

ただランダムに色を割り当てただけだと、汚い色の組み合わせもできてしまうので、とてもそのままでは使えるようなものではないが、色の組み合わせなどのスタディのスピードを上げることはできる。
この例はとても簡単なものだが、スクリプトをある程度かけるようにしておけば、自分の発想を広げるツールになりうる。。

パラメトリック・デザイン 02:illustratorスクリプティング

パラメトリックデザインというのは、変数(パラメータ)を使って形状のデザインスタディを行う、あるいは最終形態自体が、固定的でなくて可変性をもったデザイン成果物のことを言うのだが、最初にこのような概念を知ったのは学生の頃だった。

未来を拓く建築システム より

「未来を拓く新しい建築システム」 より 鳥居の形状スタディ

確か、なんだったかCADの授業か何かで、「未来を拓く新しい建築システム」という本を読まされ、(読まされたのか、買わされたか、授業でコピーが配られたのか、もう忘れてしまったが…)あまりに直球なネーミングの書籍名に怪しさを感じ、たぶんコレで未来が拓かれることはないだろうと一瞬思ったが、その中には、神社の鳥居のような形状を変数によっていろいろランダムに変更していくスタディが掲載されていて、あ、自分が間違っていた、これはすごく面白いと思った。

本文中には、CADでないとこういう発想はしない、という記述があり、こういうデジタルツールの使い方は、アナログを便利に画面上に置き換えただけのものではない、デジタルならではのものになっている。

この本自体は随分むかし(2005年)に書かれたようだが、これは現代に至るまで重要な指摘だと思っている。デジタルツールは、紙の上でもできることを便利にパソコン上でできるようにしたという以上の意味を持つ。ただ、アプリケーションを普通に扱っていると、なかなかそういう発想を持つことは難しい。例えば、ふだんデザイン作業で使用するようなillustratorやphotoshopといったものも、基本的には、色を塗ったり、文字を配置したり、以前は紙の上で手作業で行なっていたことを、パソコン上で、修正なども便利にできるようにしたものであって、ツール自体もそういう発想で作られているから、使い方に個々人の幅があるとはいえ、ツールの使い方以上のことをするのはなかなか難しい。上述の本の中にも、「(ツールの)機能の限界が、そのままデザインの限界となる」という記述が見られる。

もちろんillustratorやphotoshopは、かなり汎用性がある完成度の高いアプリケーションなので、それで作れないものなど殆ど無いようなものなので、想像力さえあればなんでも作れるはずなのだが、人間の想像力というのは、よほどの天才でない限り、そこまで柔軟ではない。先入観もあるし、思い描く形状には、自分の「癖」のようなものもある。だから、デジタルツールには、ただ自分の頭を再現するだけのものでなくて、発想を助けてくれるような、良き助手のような働きを求めたくなる。それなのに、通常のillustratorやphotoshopは、上述の本の鳥居のような、アレコレと形状をいじくり回して、デザインのスタディを行う段階のツールとしては考えられていない。

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ツールを、最初に想定された以上の使い方をするには、自分でプログラム(スクリプト)を書いて、ツール自体を変更するしかない。。ツール自体を改造することで、新しい形状の可能性を探す。例えば上の簡単な例では、色という要素をパラメータ化し、形に自動的にランダムな色彩を与えるプログラムを書いている。そうやって、色の組み合わせを考えることをコンピュータ任せにしてみると、自分ではふだん思いつかないような色の組み合わせが考えられる。自分のクセのようなものから抜けることができる。大量のスタディを行うのはコンピュータで、そこから選ぶのは自分、という作業分担ができる。

こういう、単に四角形に色彩をランダムに割り当てるといった簡単な例も、ツールに最初からある機能だけでは行うことができない。もちろん、手作業でひとつひとつ色を適当に割り当てていくことはできると思うが、そんな時間があるなら、寝ていたい。こうやってツールを拡張することで、より手軽に、無数の色彩スタディを行うことができる可能性を広げることができると思う。。

鍛冶町アクティビティセンター

鍛冶町アクティビティセンターというワークショップに参加した。

浜松の駅前に鍛冶町というエリアがあり、駅前なので数々の飲食店が立ち並ぶ繁華街なのだが、10数年前の松菱デパートの撤退のころより、駅前の空洞化が叫ばれており、さかんに地域おこし、再活性化が叫ばれている。その鍛冶町の可能性を模索し、具体的なプロジェクトを起こしていくという趣旨のもので、街中に住んでいる、いないを問わず老若男女さまざまな人が参加していた。

カードを使って、ゲームのような感じで、自分の身の周りに起きている面白い人や出来事を可視化し、いろいろな人のカードを混ぜてシャッフルして、偶発的にでた組み合わせから、具体的にプロジェクトを考えていくという、面白い発想法が用いられており、単独では一切考えつかないような組み合わせができるため、自分の認識がリフレッシュされる感じがして面白かった。

こういうランダム性を取り入れていくスタディ方法は、ある意味では、最近チラチラ書いているパラメトリックデザイン的な手法とも言える。

また1ヶ月後に続きのワークショップがある。

パラメトリック・デザイン 01:フォント自動生成ソフト

11月17-18日に、フランスのナンシーでAutomatic type design 2という、タイプフェイス(とデジタルフォント)を自動生成することについてのシンポジウムが開かれるようで、フォントの自動デザインツールであるprototypoの人などが講演するようだ。すごく面白そうなのだが、もちろん行けない…。あとで講演が動画などで公開されると良いのだけど…。

文字は、基本的に文字である以上、ある程度、形は決まっており、AはAという形でなければならない。だから、例えば、Aならば、3つの線の線幅や、傾き具合、横棒の位置、など、それぞれの文字を構成する造型要素を細かくパラメータに分解していくことで、それらを後から設定するだけで、全ての文字を手で書かなくても、ソフトで自動的に生成できるようになるのでは、といった試みがいくつかあり、そうしたもののひとつが、このprototypoというソフトウェアになる。

このシンポジウムでは、それがAutomatic type designと呼ばれているようだが、造型要素をパラメータ化して、何か新しい造形のバリエーションを探っていくという試みは、例えば建築分野ではパラメトリック・デザインなどと呼ばれていた。ジェネラティブ・デザインという呼び方も聞いたことがある。

そういった、コンピュータを使った造形手法は、自分も興味があるので、忘備録がてら、何回かに分けて、いくつかの状況をまとめてみたいと思う…。

 

prototypo

prototypoは、文字幅、Xハイトの高さ、アセンダー、ディセンダーの長さをはじめとして、セリフの形状、長さ、傾きやカーブの丸みなど、タイプフェイスを形作る様々な要素がパラメーター化されていて、それを画面上のスライダを動かして変更することで、オリジナルのタイプフェイスが動的に生成されていくというもの。
去年までベータ版が無償公開されていたが、今では月額課金制の有料システムとなっている。限られたパラメータのみ使用できる無料バージョンも、一応ある。(無料登録後にメールが来て、1回のみ有料バージョン状態で全てのパラメータを使った書き出しができるようになった。)

prototypo-official-beta

Adobe project Faces

ちなみに、ほとんど同じようなプロジェクトが、去年にAdobeからProject Facesとして発表されていた。発表時点では、パラメータの数は少ないし、まだ発展途上なのだろうという感じだった。

projectfaces

metafont, metaflop

このように、タイプフェイスを形作るさまざまな要素を数値化、パラメーター化して、それを変更することでフォントが自動生成できるのではという考えは、割と昔からあったようで、特に有名なものでは、1970年代から開発されていたmetafontという、フォントのベクターデータを記述するための言語がある。
これを使ったフォント生成システムはmetaflopとして公開されていて、セリフ付きのタイプフェイスには対応していないなど、後出のprototypoに比べて機能的には劣るが、その品質の低さが逆に面白く、ジャンク的なフォントをいろいろ作れるのに活用できる。
ボタン一発で、ランダムでパラメータを変更できるものが面白く、適当に生成されるフォントの中には、自分では考えつかないような見た目の、楽しいものもあって、そういう、想像を超えた偶発的なデザインができるのも、パラメトリックなデザインの興味深いところではある。

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Metapolator

このmetafont的な考え方に影響を受け、それを更にブラッシュアップしたものにMetapolatorがあって、これも、フォントの造型を形作る諸要素がすべてパラメータ化されていて、それをプログラムで記述して形状を変えていくようになっている。metafontが、かなり幾何学的にタイプフェイスをパラメータ化しているのに対し、こちらのMetapolatorは、カリグラフィ的な骨格、平ペンによる自然な線の強弱を再現しようとしているように見え、更には、タイプフェイスデザインにおいて絶対に必要な「錯視の補正」、とくに直線が曲線に切り替わりをスムーズに見せるための、微妙なカーブの補正などが利くようになっているようにも見える。細かいところは検証していないので、確かではないが…。

metapolator-object-model-developer-tool

まとめ

このように、タイプフェイス、フォントを手軽にカスタマイズしようとする試みは多くあって、まだ発展途上ながらも、ちょっと見た目を簡単にプロトタイピングする用途には使えそうだ。ただ、そのどれもが、人の手で作ったフォントの品質にはまだ達していない状況にあるように思う。タイプフェイス、特に本文用の、読み物に使われるものなどについては、読むときに、余計なノイズが気にならないように、文字一つ一つのカーブや線幅などが、丁寧に錯視補正されているのだが、その補正加減はかなり人間の職人技によるところが多く、それを単純なパラメータで自動的に行うことがまだ難しいのではないかと思われる。
また、Atyplでのこの動画の最後のほうでMonotypeのToshi Omagari氏が指摘しているように、スペーシング(文字と文字の間隔を適切に設定すること)についてのパラメータが一切ないことも、品質に関わる問題のひとつのようだ…。確かに、文字自体の形そのものと同じくらい、文字間隔の調整は、文章の可読性に影響する。

ただ、そういう職人的な錯視調整さえ、技術が進めば機械学習などで、過去の高品質なタイプフェイスをすべて読み込ませて、カーブの処理の最適値などを割り出すことはできる気がする…。

ゲーム写真家という人々

世の中には多くのゲーマーがいるが、写真を撮るためにゲームをプレイする、ゲーム写真家という人々がいる。何のことか一瞬分からないが、要はゲームのスクリーンキャプチャを美しく撮ることに情熱を傾けている人たちのことで、昨今のゲームはCGの表現力が尋常でないほど良くなっているため、また、広大なマップを好きなように散策できるオープンワールドタイプのゲームも多いために、美しい景色を探してゲーム内を歩き回るといったことが可能になっている。動きの速いアクションゲームなどでも、画面を一瞬制止させて、スクリーンショットを撮るためのベストアングルを決められる、「フォトモード」を搭載しているゲームもあるようだ。(リンク:『Uncharted 4』をPS4のフォトモードでプロ写真家が撮影、スクリーンショットというアートの世界)

以前に自分がプレイしたゲームでも、FIREWATCHというゲームなどは、確かに画面が異常に美しく(リアル感はないが、あえてアニメ調にデフォルメされた質感がまた素晴らしい…)、スクリーンキャプチャをするベストなアングルを求めて森の中をさまよったりした。(ネタバレになるが、このゲームに関しては、ゲーム中に使い捨てカメラを入手することができ、公式に画面を撮影することができるようになる。その撮影した写真がエンディング中に、思い出を振り返るように流れていく、とても良い演出がある。)

このゲームに関しては、ストーリーも面白いものだったが、やはりプレイした後にも思い出すのは美しい自然公園の風景であって、森の木々の隙間から指す光がきれいだったななどとしみじみと思う。。ゲームでそんな事をせず、現実で写真を撮ればいいのにという意見はもっともだが、美しい情景に出会うと現実だろうがゲームだろうが記録に残したくなるのは、本能的なものだと思う。

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ありんこオフィス

先週、しばらく東京に滞在していたのだが、打ち合わせと作業スペースとして、渋谷にあるありんこオフィスというコワーキングスペースを利用した。雑居ビルの一室にあり、特段きれいなわけでも、何か特徴的な設備があるわけでもないが、必要最低限、高速WiFiと、フリードリンクがあり、1時間当たりの使用量もそんなに高くなく、ちょっとした出先での作業時には悪くない感じはした。渋谷にはしゃれたものから、スタンダートなものまでいろいろなコワーキングスペースがそろっているので、また別なところも利用してみたい・・・。

Adobe InDesign 2017 アップデート

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AdobeのCC製品のアップデートがあり、Photoshop, illustrator, InDesignなどのソフトウェアが2017年バージョンになった。地味に、いくつかの機能がアップデートされており、特にInDesignで、線の両端に付ける矢印の大きさを拡大縮小できる機能がやっと搭載されたのは、うれしい。かなり地味ながらも、illustratorには以前からずっとあった機能で、よく使うのだが、InDesignにはなぜかずっと無かったので、悩みがひとつ解消された。

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低温調理器を自作 02

前回の記事の続き。低温調理器を5-6000円程度の材料費でDIY製作する工程。Anovaの4分の1ほどの費用で作成可能。
(もしこの記事を参考に制作をする場合は、100V電源を扱うので、一応、細心の注意を払って、配線間違いなどないようにしてください。自己責任でお願いします。)

用意する部品

・サーモスタット
・ヒーター
・ポンプ
これらは全てアマゾンで調達する。この記事(御食事件:低温調理器を自作する)にリンクが貼られているので、全く同じものを購入した。
(ただしポンプはACアダプターが付属していないので、5.5-12VのACアダプタを別途用意する必要がある。このへんのアダプタで動作すると思う。自分が使ったのはこのアダプタ

・0.5m延長ケーブル 2個(2口以上の口があるもの)
・絶縁ビニールテープ
・適当な大きさのタッパー
これらは全て100均ショップで購入した。延長ケーブルは、1m以上の長さがあれば、1個で済むが、100均では0.5mのものしか売っていなかったので、ケーブルを取る目的で2つ買った。

総計で6000円程度。

作り方

延長ケーブルを分解して配線を繋ぎなおし、サーモスタットの裏側端子につなげるだけ。

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全体の配線はこのような感じになる。

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延長ケーブルを切断。メスのほうは今回使わないので廃棄した。

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もうひとつの延長ケーブルも切断。こちらは更に10cmほどの長さのケーブルを切り出す。

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10cmの断片を割って、中の電線を取り出す。

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一本はそのまま、もう片方は更に2分割し、上の写真のように皮をむく。
片方は5mmほど(サーモスタットにつなぐ側)、もう片方は15mmほど(他の電線とねじってつなぐ側)露出させた。

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延長ケーブルのほうも先端5cmほどを皮をむいて、上の写真のように電線を露出させる。

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ケースとして利用するタッパーに適当なサイズの穴を空ける。別にケース要らない人は無しでよい。今回は見た目を気にしないのでかなり適当にやっている。

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サーモスタット、ケーブルを入れる。

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上に掲載した配線図のように、切り出した電線類を繋いでいく。繋いだ部分は絶縁ビニールテープでぐるぐる巻きにし、はずれないようにする。

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絶縁テープも普通に100均で売っている。

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サーモスタットの端子に差し込み、上部からドライバーでネジをまわして、抜けないように固定する。

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完成。たこ足コンセントのほうに、ヒーターとポンプを普通に差し込む。センサーとともに、鍋の中に投入し、問題なく動くことを確認した。

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サーモスタット側の温度を設定すると、その温度以下のときは電源がONになりヒーターとポンプが稼働し、設定温度を超えると電源がOFFになる。それを繰り返して温度を保つ。

サーモスタットのヒステリシス設定(設定温度から何度下がったら、電源をONにするかの設定)を初期設定の3度→1度に変更して、精度をやや高めている。
Anovaなどは、0.5度刻みで温度を設定できるようだが、自分の使用用途ではそこまでの精度は必要ないだろうと思う。

テスト調理

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テストとして、300gほどの豚バラ肉を、63度で4時間ほど放置してやってみた。柔らかく、非常によい感じの仕上がりになった。とても簡単で良い。

(63度というのは、一応、肉が固くならない65度以下で、殺菌に必要なギリギリの温度ということで、その設定にしてあります。よりよい柔らかさを求めるハードコアな低温調理者の人たちは、58度とか、より低い温度域でやっているようで、そのへんだと更にしっとりした仕上がりになるようですが、殺菌が出来ない可能性もあるので、自己責任でやっているようです。)

今後も活用できればと思う。

低温調理器を自作 01

肉の低温調理

自分は別に料理好きでも何でもないが、2,3年ほど前から興味を持っている料理の手法に「低温調理」というものがある。詳細は他サイトでいくらでも解説されていると思うので、割愛するが、要は低温(60度前後)で数時間かけてじっくり肉に火を通すことで、安いガチガチした肉でも、パサつかず、やたら柔らかくおいしく仕上げることが出来るというもの。

自分は、手のかかる料理というのにはあまり興味がないのだが、この手の「ほったらかしておくだけでどんどんおいしくなる」系の料理には興味があり、過去にも、煮込みをガス代もかからず手軽に行うことのできる魔法瓶鍋などを購入し、現在も活用している。自分が何か別の作業をしている間に、料理が勝手においしくなっていくという状況は、自分にとっては、時間を倍増させているというか、人生が二倍になっているという感覚すら感じるものがあり、素晴らしいと思っている。ずっと見張っていたり、ひたすら工程が多くて手のかかる料理などは、時間を無駄にしているようにも感じてしまって、よくない。

しかし、肉の低温調理というのは、1度単位でのシビアな温度管理を長時間(2時間以上)つづける必要があるため、手動でやると、ひたすら台所に張り付いて、温度計を見て、火をつけたり止めたりを繰り返すという、まさに自分の最も嫌う状況を作り出してしまうので、機械によって自動化する必要がある。

なぜ1度単位というシビアなコントロールが要求されるかというと、理屈としては「Cooking for Geeks」という料理科学本にくわしいのだが(またはkwappa氏によるこのスライド)、要は

・肉のタンパク質に含まれるミオシンとかいう成分が、50度以上で変性をはじめ、うまみを感じる成分に変わる

・コラーゲンは56-62度の温度域で十分な加熱をされると、柔らかく変性する

・しかし、66度以上になると、アクチンという成分の変性が起こってしまい、水分が出て肉がジューシーさを失い、どんどん固くなっていく

という話なので、

・65度以下の温度でひたすら肉を長時間煮るのがベスト、66度以上には絶対に上げてはいけない

ということになる。

このように、温度管理を間違うとすべてが終わる状況下のため、低温調理をやる者たちは、ひたすら鍋に張り付くとか、温度調節のできる温水器でお湯を垂れ流し続けるとか、もろもろの努力をはらってきていたようだった。

だが、2,3年前にAnovaという、低温調理専用の、鍋にアタッチして使える温度調節器具の真打ちが登場し、温度管理を全自動で行えるために、それさえあれば、まさにほったらかしておくだけで、ジューシーな肉が完成するという状況が作り出せることになった。

低温調理器の本命Anovaは高いので、自作へ

ただAnovaは円高の現在でも2-2.5万円と安くはなく、自分の場合、飽きる可能性もあるし、買うのをずっとためらっていた。

しかし自作なら安く作れるのでは?と思い、ググったところ、やはり既に自作している人がいて(リンク:御食事件 低温調理器を自作する)、これだと5000円程度で作れるようだった。この人の天才的なところは、サイトには明言はされていないが、「低温調理器って要は熱帯魚の水槽の温度管理システムと同じでは?」と考えたところで、実際に熱帯魚水槽用のヒーターとポンプ、サーモスタットを活用し器具を制作していた。

自分もこの人のやりかたで、低温調理器を自作した。作業時間は、2時間もかかっていないくらいであっさりと完成した。

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早速、63度で4時間ほど、豚バラをやってみたが、ほったらかしておくだけで、非常に柔らかく、おいしい仕上がりとなり、満足している。

一応、誰か作りたい人がいるかもしれないので、この器具のDIY工程を細かく書いていこうと思うのだが、記事が無駄に長くなりそうなので、その過程は次の記事に回そうと思う。

Startup Weekend Hamamatsuに参加してみた

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28日~30日にかけて、Startup Weekend Hamamatsuというイベントに参加していた。ハッカソン、アイデアソンの一種で、週末の3日間で、参加者が何人かのグループを作って、サービスのアイデアを立案し、疑似的に企業企画書の作成からプレゼンテーションまでを行うというイベントだった。スタートアップ・ウィークエンド自体は、世界のいろいろな国で行われているイベントで、東京に居たころにも案内を見たことがあったので、知っていたのだが、参加したことはなく、今回浜松で行われるというので、どんなものなのかと試しに参加してみた。

フィールド・ワークが全てという価値観

結論から言えば、フィールド・ワーク主体で、現地調査とインタビューに100%の力点を置くアイデア立案のやり方は、なかなか面白くて勉強になった。ファシリテーターの人が何度か繰り返していたが、「自分で思っているだけのアイデア、チームメンバーが会議室で話しているだけのアイデアはすべて妄想とする。価値はないと考える。」というやや極端な前提にたっており、「自分自身の着眼点」みたいなものは一切、信用せず、必ず、そのサービスの想定利用者となる人たちの声を聞き、彼らが問題に感じていることをどう解決するかにフォーカスするという、完全リサーチベースのアイデア立案手法を学ぶという場だった。

そのフィールドワークも、極端に言えば、現場の人に、「何か困ってることはありませんか」と直で聞くようなスタイルで、問題点の発見は外部にゆだね、それの解決策を考えることのみに集中することで、素早くクリティカルなサービスアイデアにたどり着くという考え方のようだった。問題への着眼点にこそ、オリジナリティが必要で、自分自身の独自性を出すという考え方も、世の中にはあるので、それとは真逆のもので興味深かった。

学びはチームに依存する

やり方を学ぶ、と書いたものの、イベント自体は、運営側がアレコレ指示したり、レクチャーするような場面はほんの少ししかなく、参加者主体で行われるものなので、参加すればある一定のメソッドが必ず学べるという類のものではないと思われた。今回は、たまたま自分のチームに、リーン・スタートアップ等の研究をしていて、メソッドに詳しい大学院生がおり、彼が結構、行動を促したり、考えをまとめるための専用のシート等を持参してくれたりしていたので、やり方を学べる形になったが、何を学び何を得るかは、チームに依存する気がした。

疑似か、本気か・・・

今回の参加者の中で、持ち寄ったアイデアをつかって、実際に起業したいと考えていた人はほぼいなかったように思う。自分も、今回のイベントを、あくまでリーンスタートアップ式のサービス作りのやり方を体験する疑似的なワークショップとして捉えていて、何かここでビジネスチャンスを掴んで実際に起業してやろうという気は、無かった。
ただ、主催者側のイベント趣旨としては、実際の起業家を生み出すという目的があったらしいので、その点では温度差があったのかもしれない。もっとも、本当に起業家を産み出すための実践的なイベントだったとしたら、参加者への事前課題や、専門家たちの厳しいチェック等が必要なのは明らかだから、運営側としても、今回のものはそこまでシリアスでないワークショップ的な意味合いでやっていたのかもしれない。
或いは、シリアスなものにするか、疑似的なものにするかは参加者しだい、意欲次第で白くも黒くもなるという傍観者スタンスを意図的にとっているのかもしれない。参加料を支払うとはいえ、NPOで行っているイベントなので、コテコテの有料セミナーのようにはしたくないのかもしれない。全て憶測にすぎないが・・・。

参加者たち

今回は20人程度の人々が集まっており、参加していた方々は、学生もいたし、自分のような個人事業主もいたし、企業に勤めていて、新規事業立案に携わっているような人もいたし、モノづくりが好きで興味を持ったという人もいた。予想していたより人が集まらなかったのか、運営側の人たちも何人か参加者側に回っていた。

できたもの

自分たちのチームは、Yes/Noクエスションによる本のリコメンドサービスを作成した。

bookconcierge

図書館によく通っている自分が、本の返却時に関連書籍をオススメしてほしいと思ったことを発端にしたアイデアで、当初は、Amazonの「この本を読んだ人はコレも読んでいます」的なものを図書館でやろうとしたが、それは実際のフィールドワークで、図書館は個人情報保護の観点から本の貸し出し履歴を一切ログしていないこと、分析もやっていないことが分かってボツになった。そこで、ログを必要としないもので、何か学びたい分野がある時に、そのキーワードを入れると、その人のレベルに合わせて、「最初の一冊」となる適切な本を一冊だけオススメしてくれるというサービスになった。

キーワードを入れると、いくつかのYes/No形式の二択質問が生成され、それに画面スワイプでサッサッと10問くらい答えていくと、その人のレベルとか適性が判断され、最適な入門書が一冊選ばれるという仕組みになっている。(画面はあくまでモックアップで、実際のシステムなどは作られていない)

Webサービス、および図書館や書店に置かれる情報端末としての利用を想定。

おわりに

2.5日間くらい、ずっと連続して行われるイベントなので、結構疲れたが、自分にとっては、新しい発想のやり方を知る良い機会となった・・・

静岡文芸大図書館

最近は、持ち物をなるべく減らしていきたいという意向もあって、以前は購入しまくっていた書籍も、買わずに図書館にあるものは図書館で借りて読むようにしている。資料的価値の高いビジュアル本などは、相変わらず購入しているが、読み物系の本は、とりあえず買う前にカーリル等の図書館横断検索サービスで検索するようにしている。

浜松市の図書館は、意外と品ぞろえは良いのだが、自分の読みたい芸術系・建築系の専門書籍についてはやはりあまり数は多くなく、難しいものがあると思っていた。しかし、今日、駅近くにある静岡文化芸術大学の図書館が一般利用できるという話を聞いて、行ってみたところ、充実した品ぞろえで、しかも館内利用だけでなく、貸し出しも可能で、かなり素晴らしい読書ライフが送れそうなことがわかった。

少なくとも自分の出身大学は、学外利用はかなり制限されていたし、貸し出しなどは一切行っていなかったので、まさか大学図書館が一般貸出を行っていると思わなかったが、調べてみると市内の他の大学も一般利用ができるようだった。知らなかった・・・

Microsoft Surface Studio, Surface Dial & Mental Canvas

Microsoft Surface Studio & Surface Dial

Microsoftの新しいコンピュータ、Surface Studioが発表された。同時発表された新しい入力デバイスSurface Dialも合わせて、凄く面白いプロダクトだと思った。

パッと見はAppleのiMac的なオールインワンタイプのコンピュータだが、モニターが28インチと巨大で、4500×3000ピクセルもの解像度があり、チルト可能で、更にタッチ&ペン入力に対応し、まるで紙に描くように、絵を描いたり図面を描いたりできるようだ。(ちなみにiMacは最大のもので27インチ、解像度はiMacのほうが上で5120×2880ピクセル)

特にSurface Dialという新しいデバイスがいい感じで、手のひらに収まるシンプルな円筒を、画面の上に置くと、そこからメニューやカラーパレットなどがブワッと表れて、直感的に画面を回転させたり、描きながら色を連続的に変化させたり、できるようだ。

こういうダイアル型インターフェイスは、数年前から、例えばメディアアートの展覧会などで、今までも同様のコンセプトを持ったものが多数発表されていたと思うが、ついに手元に降りてきたという感じがする。

通常、パソコンでドローイングだったり3Dモデリングしたりする際には、左手がキーボートに常に添えられていて、各種ツールをキーで切り替え、右手のマウスやホイールで実際の線を描いたり位置を決めたりする。マウスは、「連続的な変化」を扱えるツールだが、キーボードは、押したか押してないかという、「ゼロかイチかの変化」しかできないデバイスなので、必然的に、左手はモード切替、右手で細かい選択と描画、といった役割分担になることが普通なのだが、Surface Dialは、左手でも「連続的な変化」を可能にするツールなので、左手の可能性が増えて、右手を描くこと等のクリエイティブな要素のみに集中させられるように思う。

Mental Canvas

映像の後半で紹介されているMental Canvasという新しいドローイングソフトもかなりいい感じで、平面のドローイングを描きながら、それが(たぶん)半自動的に3D空間に変換されていって、手書きのスケッチの中を歩き回るように探索したり、後から構図を変えたりといったことができるようだ。Microsoftは以前からPhotosynthなどの、写真を自動的に立体化する技術を持っていたので、それを手書きスケッチに応用した感じなのかなと思う…。手書きの建築スケッチが、その場で広がりを持った空間に変換されるのは面白そうだ…。

昨今は、こうしてデジタル技術が、アナログなインターフェイスや表現を基盤にしながら、アナログだけでは絶対に制作不可能な領域に表現を進化させていっていて良い。。

レクチャー

chair

先週のことになるが、ある専門学校でレクチャーをする機会があった。インハウスデザイナーだったころの経験をもとに、企業の中でデザイナーがどういう役割ができるのか、ブランディングとは何かなどの内容を話した。学生も熱心に聞いてくれたようで、良かった。普段、わりと口数少なだと思われることが多いが、こうやって何かを話したり、そのための資料をいそいそと集めたりするのは結構好きなほうだと思う。。

美大出身でないデザイナー

brush

自分は美術系の大学を出ずにデザインの職についたのだが、やはりデザイナーというと美大を出ている人が多いので、たまに同僚たちとの会話や、デザイナーの集まりなどで、出身の話になることがあると、やや冷笑された感じで、「頭いいんだね」などとからかわれることが、ある。。さらに、自分の好きな美術やデザインが、バウハウスだったり、今まで紹介してきたようなタイポグラファだったり、理知的に造形や美術を押し進めた人たちだったりするので、そんな話をすると、頭でっかちでつまらんといったコメントをもらうことも、ある。

もちろんそう思う気持ちもわからないでもないし、美大の受験理由の上位には常に、「勉強がきらいだったから」というのが入っているはずなので、構造的にそういうコメントが出るのはしかたがない。

ただ、それでも自分は、見るからに感情的で、直感のままに何かとてつもないものを生み出すタイプの人より、やたら理性的なのに、理性的に考えを突き詰めた結果、ある異常な地平に出てしまったといったタイプの表現者に惹かれる。理知的に狂っているという状況が、とても魅力的に思える。音楽などでもそうで、いかにもロック的な見た目の人たちがロック的な音楽をやっていても面白さを感じないが、おとなしそうなガリガリの若者がいきなり破壊的なノイズミュージックなど演奏しだすと、心が躍る感じがする。理性によって、感情だけでは開けない地平に出た感じがする。

それは結局はギャップに惹かれているという話なのかもしれないが、、直感よりも、理性によって異質なものを生んでいくことが面白いと感じる。建築家なんかは、そういうタイプの人が多く、理路整然と自作を解説しているが、その対象の作品がとても見たことが無いような異常な空間だったりして、まさに理知的に狂っているという感じがして、本当に面白いと思う。

清原悦志:タイポグラフィに興味を持ったきっかけ 09

この、タイポグラフィの~シリーズ、なんとなく固い話が多くなるので、いったい誰が読んでいるのかという感じなのですが、、、自分では書いていて結構たのしいので、もう少し続けます。。

清原悦志のレイアウト

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思潮5号 1971夏 より

朗文堂では、緻密なエディトリアルデザインで知られる白井敬尚氏が講義を行った回が数回あったのだが、その中で、氏が参考として持ってきてくれていた70年代のとある雑誌があった。

それは「思潮」「牧神」といった文学・文学批評の雑誌で、内容は、このようなアカデミズムが力を持っていた時代特有と思われる、難解かつやや哲学的なテーマを扱った雑誌という感じだったが、パラパラとめくると、すぐにその際だった紙面のレイアウトに目を奪われた。

とにかく余白の取り方が独特で、大胆に下部が空白のまま残されていたり、ノンブル(ページ番号)が左上に2ページ分まとめて記載されていたり、何の図版もない文字だけのページなのに、絵画を見ているような造形的な美しさがあった。これは清原悦志というデザイナーの手によるレイアウトで、すでに亡くなられてしまったが、文字が主体の雑誌が多く発行されていた7,80年代に、この透明感と緊張感のある紙面設計で活躍していたデザイナーとのことだった。

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牧神12号 1978年 より

文字のレイアウトによる遊びで、紙面にリズムを出して飽きさせないようにするといった手法は、一般に雑誌などで行われていることだが、この人のレイアウトは、単に形としてレイアウトで遊んでいるという感じでなく、読み手が文章に引き付けられていくような、文字が、文章がとにかく美しく読みやすく見える感じがあった。

それがなぜなのか、一見して自分には理由が分からなかったのだが、「活字の正方形グリッド」を活かした設計になっていることが、このクリーンな印象を作っているひとつの要素だとのちに知った。

規律のある紙面設計

日本語のこうした文章用の書体は、縦組みでも横組みでも使えるように、「正方形」に収まるように作られているので、それを並べていくと、必然的に文字は規則正しく等間隔に並び(ベタ組みといわれる状態。大別するとベタ組とツメ組のふたつがあるが、どちらも利点と欠点がある。)、正方形のグリッド上に配置されていく。その正方形グリッドと、行間のスペースを、ひとつの単位として、文字ボックスの上下左右の余白もそれの倍数となるように調整していくと、紙面全体がひとつのリズムで統制されたものになる。その規則正しいリズム、構造をつくったうえで、余白の操作を入れているので、ただ形で遊んでいるだけで読みにくい紙面でなく、文章を引き立てる独特の透明感のある紙面が作れるのだと分かった。

そもそも本の判型すら、A5とかA4とか、そういう一般規格化されたものでなく、そのグリッドに従って、その規律に合うようなサイズに調整されている。

この清原悦志のやっていたデザイン会社の名前も、「株式会社 正方形」というらしく、この人の哲学が簡潔に表されていると思って、すごい名前だなと感心したことを覚えている。。

ちなみに清原悦志は、先述した北園克衛の主宰していたVOUという詩人のグループに所属しており、そこではoptical poemといった、言葉と視覚の新しい融合した形を模索する創作がなされており、そこで北園が行っていた、紙面と文字のバランスをどうとるかという実践から、かなりの影響を受けていたようだ。

紙面を、構造をもって設計していくというこういった手法は、当時、建築設計を学んでいた自分にとって、何か近しいものを感じ、とても腑に落ちるものがあり、これまでのもろもろの学びがリンクしていく感じがして、よりいっそうタイポグラフィやレイアウトに関心を持っていくようになった。。