石井明朝体

駅のそばの駐車場のエレベータの注意書きステッカーが、強い色彩とシンプルな線画で良い雰囲気だった。特に、「あぶない」の書体が、いまのDTPでは使うことのできない、写研の写植用書体、「石井太明朝体オールドスタイル」で組まれていて、味がある。

かつて日本では書体メーカーは写研とモリサワが2大勢力で、2大といっても、写研が7-80%のシェアを占めていたようだが、80年代後半に時代がコンピュータを使った組版(DTP)に移行していく中で、積極的に書体のデジタル化を進めたモリサワに対し、写研は独自路線で書体のデジタル化や販売を行わない姿勢を貫いたことから、シェアは一気に逆転し、写研はもはや使用されることはほとんど無くなってしまった。

しかし写研のフォントは、当時一大勢力を誇っていたように、その形の美しさや完成度は今もなお失われておらず、時々、どうしても写研のフォントでなければ雰囲気が出ないとこだわる書籍編集者や装丁者によって、ほそぼそと使われ続けているようだ。

このステッカーに関しては、写研のシェア全盛期の30年以上前に貼られたままずっとそのままなのか、あるいは、その当時の版下を使い続けているステッカー業者がいるのかどちらかだろうが、この独特のやわらかい雰囲気のひらがなは、たしかに目に留まる。

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