パラメトリック・デザイン 01:フォント自動生成ソフト

11月17-18日に、フランスのナンシーでAutomatic type design 2という、タイプフェイス(とデジタルフォント)を自動生成することについてのシンポジウムが開かれるようで、フォントの自動デザインツールであるprototypoの人などが講演するようだ。すごく面白そうなのだが、もちろん行けない…。あとで講演が動画などで公開されると良いのだけど…。

文字は、基本的に文字である以上、ある程度、形は決まっており、AはAという形でなければならない。だから、例えば、Aならば、3つの線の線幅や、傾き具合、横棒の位置、など、それぞれの文字を構成する造型要素を細かくパラメータに分解していくことで、それらを後から設定するだけで、全ての文字を手で書かなくても、ソフトで自動的に生成できるようになるのでは、といった試みがいくつかあり、そうしたもののひとつが、このprototypoというソフトウェアになる。

このシンポジウムでは、それがAutomatic type designと呼ばれているようだが、造型要素をパラメータ化して、何か新しい造形のバリエーションを探っていくという試みは、例えば建築分野ではパラメトリック・デザインなどと呼ばれていた。ジェネラティブ・デザインという呼び方も聞いたことがある。

そういった、コンピュータを使った造形手法は、自分も興味があるので、忘備録がてら、何回かに分けて、いくつかの状況をまとめてみたいと思う…。

 

prototypo

prototypoは、文字幅、Xハイトの高さ、アセンダー、ディセンダーの長さをはじめとして、セリフの形状、長さ、傾きやカーブの丸みなど、タイプフェイスを形作る様々な要素がパラメーター化されていて、それを画面上のスライダを動かして変更することで、オリジナルのタイプフェイスが動的に生成されていくというもの。
去年までベータ版が無償公開されていたが、今では月額課金制の有料システムとなっている。限られたパラメータのみ使用できる無料バージョンも、一応ある。(無料登録後にメールが来て、1回のみ有料バージョン状態で全てのパラメータを使った書き出しができるようになった。)

prototypo-official-beta

Adobe project Faces

ちなみに、ほとんど同じようなプロジェクトが、去年にAdobeからProject Facesとして発表されていた。発表時点では、パラメータの数は少ないし、まだ発展途上なのだろうという感じだった。

projectfaces

metafont, metaflop

このように、タイプフェイスを形作るさまざまな要素を数値化、パラメーター化して、それを変更することでフォントが自動生成できるのではという考えは、割と昔からあったようで、特に有名なものでは、1970年代から開発されていたmetafontという、フォントのベクターデータを記述するための言語がある。
これを使ったフォント生成システムはmetaflopとして公開されていて、セリフ付きのタイプフェイスには対応していないなど、後出のprototypoに比べて機能的には劣るが、その品質の低さが逆に面白く、ジャンク的なフォントをいろいろ作れるのに活用できる。
ボタン一発で、ランダムでパラメータを変更できるものが面白く、適当に生成されるフォントの中には、自分では考えつかないような見た目の、楽しいものもあって、そういう、想像を超えた偶発的なデザインができるのも、パラメトリックなデザインの興味深いところではある。

modulator-metaflop

Metapolator

このmetafont的な考え方に影響を受け、それを更にブラッシュアップしたものにMetapolatorがあって、これも、フォントの造型を形作る諸要素がすべてパラメータ化されていて、それをプログラムで記述して形状を変えていくようになっている。metafontが、かなり幾何学的にタイプフェイスをパラメータ化しているのに対し、こちらのMetapolatorは、カリグラフィ的な骨格、平ペンによる自然な線の強弱を再現しようとしているように見え、更には、タイプフェイスデザインにおいて絶対に必要な「錯視の補正」、とくに直線が曲線に切り替わりをスムーズに見せるための、微妙なカーブの補正などが利くようになっているようにも見える。細かいところは検証していないので、確かではないが…。

metapolator-object-model-developer-tool

まとめ

このように、タイプフェイス、フォントを手軽にカスタマイズしようとする試みは多くあって、まだ発展途上ながらも、ちょっと見た目を簡単にプロトタイピングする用途には使えそうだ。ただ、そのどれもが、人の手で作ったフォントの品質にはまだ達していない状況にあるように思う。タイプフェイス、特に本文用の、読み物に使われるものなどについては、読むときに、余計なノイズが気にならないように、文字一つ一つのカーブや線幅などが、丁寧に錯視補正されているのだが、その補正加減はかなり人間の職人技によるところが多く、それを単純なパラメータで自動的に行うことがまだ難しいのではないかと思われる。
また、Atyplでのこの動画の最後のほうでMonotypeのToshi Omagari氏が指摘しているように、スペーシング(文字と文字の間隔を適切に設定すること)についてのパラメータが一切ないことも、品質に関わる問題のひとつのようだ…。確かに、文字自体の形そのものと同じくらい、文字間隔の調整は、文章の可読性に影響する。

ただ、そういう職人的な錯視調整さえ、技術が進めば機械学習などで、過去の高品質なタイプフェイスをすべて読み込ませて、カーブの処理の最適値などを割り出すことはできる気がする…。

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