朗文堂・新宿私塾01:タイポグラフィに興味を持ったきっかけ 06

_dsc9711

タイポグラフィ専門の出版社のデザイン塾

前回書いたように、雑誌「アイデア」を読み漁っていたある日に、巻末の広告にて「新宿私塾 タイポグラフィスクール 塾生募集」という小さな広告を見つけた。当時、大学では建築設計を学んでいたので、グラフィックデザインのことは完全に独学で勉強していたに過ぎなく、なんというか自分でもどのように学んだら良いのか、とっかかりが無く悩んでいた。グラフィックデザイン全般の学校はいくらでもあったが、自分の興味の中心は文字にあり、それ専門の教育機関というのは当時見つけることができないでいた。その時にこの塾の広告を見つけ、そのアカデミックな感じに惹かれて、すぐに応募した。朗文堂はタイポグラフィ・書体関連の書籍を専門に発行している出版社で、本もいくつか見たことがあったので、ここなら深い知識が学べそうだと思った。

半年間でタイポグラフィの基礎を多角的に学ぶ

自分が実際に受講したのは新宿私塾の第10期、2007年の4月から9月までの半年間だった。もう9年も前のことになる。そのなかで、ざっと下記のようなカリキュラムを学んでいった…。

タイポグラフィ概論
スペーシング基礎
和字・漢字書体の歴史
公版印刷所・理想社でのフィールドワーク
活字組版指定基礎
欧文活字の歴史・ローマン体の成立
欧文書体の分類・グーテンベルグのブラックレターから近代サンセリフまで
欧文組版の基礎
日本の活字版印刷概略史
名刺デザイン制作
組版と多義性・音楽とタイポグラフィ
デザイン実務紹介・図録製作の実務
凸版印刷博物館の見学
本文組版演習
紙面設計工程の紹介
フォーマットとグリッドの概略史
書物の組版を見る・恩地幸四郎、堀辰雄、立原道造など
サイン・デザインの現場紹介
コーポレート・アイデンティティおよびブランド・アイデンティティ構築
構造としての造型言語・リートフェルト、ミース、フラー
アプリケーション・組版ソフト・電子活字
ポイントシステム概略
活版印刷のイロハ・アダナプレス機を用いた活版印刷
明治期の和様活字書体を見る
活字書体設計の基礎と実践・レタリングからタイプデザインへ
製本術入門
造本概略

来ていた人たち

受講者は全部で10人で、すでにグラフィックデザイナーとして働いている人もいれば、自分のような学生もいたし、印刷会社で働いている人、またweb開発をしている人などもいて、それぞれ背景は違えど、皆、文字について、体系的に知りたいと思って、ここに来たようだった。

講師陣には、朗文堂代表の片塩二朗、雑誌「アイデア」のアートディレクションをしていた白井敬尚、活字書体デザイナーの今田欣一、アドビの山本太郎など、意欲的に研究と実践を繰り返している方々が幾人も名を連ねていて、多様な視点で文字について語ってくれた。人によっては、それらの講義がアカデミックすぎると感じるかもしれないなと思う内容もあったかもしれないが、自分にとっては、歴史から学ぶ、ということはとても腑に落ちるプロセスだったので、どれも興味深かった。また、それまで知っていたデザインの歴史を、文字という切り口で見ると、また全然違ったものに見えてくるということが凄まじく面白く、どんどん調べたいことが広がっていって、その後の確かな道しるべになった。

新しい分野を学ぶときは、完全な独学だと、そもそも何から調べていいかすら分からないので、こういう講座で、概略を学べたことは本当に助かった。朗文堂は出版社なので、数多くの良質な参考書も事務所に置かれていて、毎回、毎回美しい書籍を手に取って見ることができたのも大きかった。こうやって少しでも扉を開けてもらえると、そこからの学びはずいぶん違ったものになったと、思う。。

 

つづきます

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です