サウンドデザインシンポジウム

昨年の話になるが、2016年12月16日に開かれたサウンドデザインシンポジウムin浜松というものに行った。なぜかネヴィル・ブロディ(というイギリスのかなり大御所のグラフィックデザイナー。前衛的なタイポグラフィ作品などで90年代に世界を席巻した。)が基調講演に来て、しかも無料だというので、応募して、聞きに行った。

サウンドデザインシンポジウムという、音関連のシンポジウムでなぜグラフィックデザイナーのネヴィル・ブロディが来るのだろうと不思議に思ったが、ブロディ氏は、教鞭をとっているRCAで、最近、「サウンドデザイン学科」という新しいコースを設立したらしく、視覚的なデザインだけでなく、音も含めて総合的なコミュニケーションデザインの領域を押し広げることに挑戦しているらしかった。講演のスライドによると、氏の専門であるタイポグラフィで、フォントが変われば伝わるメッセージが変わるように、音もメッセージに大きな影響を及ぼすはずで、それなしで新しいコミュニケーションデザインは作られないと思ったと言っていた。

サウンドデザインというものについては、Beyond composition(コンポジションを超えたもの。視覚的なレイアウトでは表現できないものという意味だろうか…?)、Perceived form(知覚された形。視覚以外のインプットでイメージされる形といった意味?)などと表現していた。

すでに作られた学生作品をいくつか紹介してくれていたが、それらがとても面白く、街中の構造物にマイクを付けて楽器化したり、貝殻に耳を当てると海鳴りのような音が聞こえるように、音響工学的に割り出された不思議な形状の彫刻を作って、それに耳を当てるといろいろなノイズが聞こえ、それらが海、森、都市といったようにストーリーをもって展開されていく一連の彫刻群など、見えていなかったものや、既存の何かを敢えて音に変換してみることで生まれるものを探求しているようだった。これについては、サウンドデザインの根幹をなす考えとして、これをSonification(音波化すること)と呼んでいるとのことだった。こうやって、ただ作品を作り出すだけでなくて、相当数のリサーチと、作品を作り出すプロセスを手法化し、Sonificationのようにシンプルな単語にまとめ、何を音波化したか、どうやって音波化したか、など、皆が作品を説明し合える基礎的土壌をつくった上で教育を行っているのが、やはり良いなと思った。新しい分野で、誰も何も良くわかっていないからこそ、皆で使える共通言語を作っていくことは有効なのだろうと思う。

講演が終わったあとに、少しだけ本人と話をできる機会があった。何か実際のプロジェクトで、このサウンドデザインの考えを実践した例があるのかと聞いたら、それは残念ながらまだ無いとのことだった。ただまだ何も確立されていないこの分野は、どのようにでも発展しうるし、そこを行くのが面白いとの事だった。ネヴィル・ブロディほどの知名度を誇り、数多くの達成をした人でも、そこにとどまらず未開の分野につっこんでいくのは、やはり期待を裏切らない感があった。

ちなみにこのシンポジウム自体は、浜松市がユネスコ創造都市ネットワークというものの音楽分野に認定されたことにより、2017年にサウンドデザインフェスティバル?なるものの開催を予定しているらしく、それに関連したウォーミングアップ的なものだったようだ…。

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